寝屋川市

いまぼくたちは、ここにふたりだけだ。ほかから完全に切りはなされている。自然のなかにほうり出された感じが、全身の感覚に、せまってくる。「す・て・き」と、音を切って、作業員が囁いた。囁き声こそ、いまのこの場に、もっともふさわしい。虫の鳴き声がする。どこか遠くに、野鳥の声も聞えた。ぼくは、水漏れから荷物を降ろした。小型のストーブで湯をわかした。ガス・カートリッジを使い、三時間ちかくフル・フレームで燃やしつづけることのできるストーブだ。二杯の熱いブラック・コーヒー寝屋川市 トイレつまり のついた、ステンレス・スティールのカップに、注いだ。湯気が、冷えた空気のなかで、たとえようもなく、うれしい気分の象徴のようだ。草のうえにならんで腰を降ろし、ゆっくり、ぼくと作業員は、その熱いコーヒーを飲んだ。何度もカップを草のうえに置いては、口づけばかりしていたから、飲みおえるまでに、ずいぶん、時間をくった。どんどん、暗くなってくる。口づけばかりも、してはいられない。テントを張る位置を決めた。水栓部品から借りたキャンピング道具は、機能的にできた一流品で、ととのえてある。